研究概要 |
本研究では圧縮着火過程の反応に関して3種の反応モデルを開発し,NO生成の機構を解明するとともに,すす生成モデルの基礎あるいは前提となるモデルを確立した.さらに低温から高温雰囲気までカバーする自着火モデルの可能性を検討した. 第1のモデルはディーゼル燃焼の雰囲気を想定した高温酸化モデルであり,燃料が熱分解から部分酸化を経てCOとH_2に至る過程を一段総括反応として扱うEdelmanのモデルを基にCOとH_2を含む詳細な動力学モデルと結合し,圧縮自着火の熱的側面を記述した.このモデルにさらにNO生成の詳細モデルを加え,ディーゼル燃焼における乱流混合過程による不均一反応をモデル化するための確率過程論モデルに組み込んだ.実測圧力との比較によりモデル定数を定め,NO濃度計算を行って実測値と良い一致を得た. 第2のモデルは高温酸化に先立つ燃料の熱分解過程を表現し,すす生成・消滅を予測する上に重要な熱分解成分の生成機構を解明するものである.このモデルはReice-Herzfeld機構に基づき,セタンについて示す一つの総括反応および二つの素反応から成る. C_<16>H_<34>→4C_2H_4+2i-C_4H_9;n-C_4H_9→C_2H_4+C_2H_5;i-C_4H_9C_3H_6+CH_3 このモデルにC_2炭化水素に関する酸化詳細モデルを組み合わせ,急速圧縮装置による着火遅れの実測値と比較する事により総括反応の速度定数を定めた.計算による熱分解成分割合は実測結果と良い一致が得られた. 第3のモデルは低温酸化機構に関するもので,予混合圧縮自着火機関の着火過程を記述することを目的に行った.900K以下についてはKeckのモデルを基とし,実測着火遅れと一致するよう最適化を行い,900K以上については上述の熱分解機構を用いることにより,低温から高温にわたる自着火反応モデル構築の可能性を示した.
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