研究概要 |
本研究の目的は,超伝導電力用機器に用いる大電流大型導体の最適設計法の確立に資する学術的知見を得ることである。本研究では,特に,損失や電流分布などの電磁特性と,応力歪特性などの機械特性とが相互に作用し合うという,「電磁機械結合効果」とでも呼ぶべき新しい視点に立って,導体の基礎特性を検討した。 まず,スプリット型超伝導レーストラックマグネットや超伝導電流トランス等を設計・製作し,超伝導大型導体の「通電時損失測定装置」を新たに完成させた。この測定装置では,2〜3テスラ程度の直流バイアス横磁界下において,最大40mm角断面で約1.2m長の実規模導体の短尺試料に数+kAの大電流を通電した状態で,0.05^〜300Hzの周波数範囲での交流損失を測定できる。超伝導大型導体のうち,特に,パルスコイル用強制冷却型のケーブル・イン・コンジット実規模導体の損失特性について,この「通電時損失測定装置」を用いて損失特性の電磁力依存性を測定した。その結果,実用周波数0.01Hzで,0.9MPa程度までの電磁応力の範囲においては,電磁力の増加に伴い,素線間結合損失が最大2倍程度増加することが明らかになった。また,電磁力の増加に伴い,導体内部で局所的な機械振動が観察された。 さらにこの損失の増加が純粋に電磁力だけによるのか,それとも導体内の電流分布にも関連しているのか,という点を明確にするために,通電電流とバイアス磁界の組合せを変えて,同じ電磁力で通電電流が異なる条件での損失測定も行った。その結果,同じ電磁力でも通電電流により損失値が異なる結果が得られ,損失の増加に電流分布も関連していることがわかった。また,強い電磁力を受けた状態での実規模導体の電流分布についても測定した。この測定より,導体内の電流分布は局所的には一様でなく,導体の長手方向で変化しているという結果も得られた。
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