研究概要 |
研究を順調に遂行し,以下に示す成果を得た. (1)ARモデルを基にして,実画像信号の持つ振幅特性を近似的に実現する擬似画像信号を生成する修正ARモデルを開発した. (2)DCT,DPCM,フラクタルなどの符号化方式は,(1)を用いて生成した擬似画像信号に対して,実画像とほぼ同じ圧縮性能を示した. (3)実画像信号や擬似画像信号の持つ振幅スペクトルや位相スペクトルを組み換えて,新しいハイブリッド画像信号を生成するスペクトル組み換え画像生成法を提案した. (4)(3)の手法により生成した様々なハイブリッド画像信号の圧縮実験を行った結果,DCT,DPCM,フラクタル符号化ともに圧縮には振幅スペクトルの情報のみが利用されており,位相情報は用いられていないことが判明した. (5)修正ARモデルやスペクトル組み換え法により生成した擬似画像信号を検討した結果,画像の特徴である輪郭等の形状情報は,現状の符号化方式では利用されていない位相スペクトルに含まれていることが明らかになった. (6)位相情報すなわち形状情報の積極的な利用が新しい圧縮原理につながるとの見通しを得た. (7)形状情報を積極的に利用するため,微小な基本ブロックを統合して形状に整合したレンジブロックとする新しい可変形状フラクタル符号化方式を提案した. (8)(7)の方式は形状を可変にすることにより,より効率良く精度の高いパラメータ群を形成することができ,圧縮性能が向上した. (9)矩形2次元DCTの基底を基にして,任意形状に適合した変換基底を導いた. (10)(9)の基底を用いる任意形状変換符号化の実験を行った結果,大幅な圧縮性能の向上が得られた. 以上のように,形状情報の重要性を見い出し,それを積極的に用いた符号化方式により圧縮性能の向上を実現することができた.
|