研究概要 |
本研究は,等濃度領域を利用した動画像の極低ビットレート符号化について検討したものである.一般的に,低レート化が進行するに従い画像全体を一律に符号化することが困難となるといったことが生じる.そこで,画像中から有意領域を特定し,高能率符号化を実現するといった手法が必要となる.本手法では,符号化対象を人物肩上画像に限定した上で動画像系列から人物の顔を特定し,画像中において有意領域となる顔に対し高能率符号化を行うことによって主観的評価の向上を図った.顔領域の特定処理では,特別な制御信号を必要とせずに送受信側で等しい顔領域を抽出することが確認できた.次に,抽出された顔領域(有意領域)と非有意領域に対し,それぞれ等輝度領域に基づく領域分割を行う.また,得られた領域毎にフレーム間の変形を考慮した動き補償を行い3次元的な動きにも対応可能となっている.本手法では,ブロックマッチング法に見られるようなブロック歪みが生ぜず視覚的に良好な予測画像を作成できることが確認されている.さらに,予測誤差伝送では画質劣化が起こる顔領域に対し重点的に予測誤差情報を配分し,復元画像の主観的評価の向上を図っている.標準動画像″Clarie″を使用して実験を行った結果,画像全体に対しては平均で35.1dBのSNRに対しビットレートが31.1kbps,また,顔領域のみを復元した際には平均で30.9dBのSNRに対し20.2kbpsのビットレートで伝送することが確認されている.以上のように,本研究では動画像系列から人物の顔領域を特定した後,対象画像や伝送レートに応じて高能率符号化を行うことが可能である.
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