研究概要 |
不確かさを持つモデルに基づいて合理的な制御系を設計するための手法を目指し,種々の研究を行なった.制御対象のモデルに不確かさが含まれることが避けられないということに着目し,対象を単一のモデルではなくモデルの集合によって表現するというのが本研究の出発点である.この視点に立つことにより,モデル集合の大きさとしての不確かさの定量化,モデル集合を制御することによる不確かなシステムの制御といった問題に関して幾つかの具体的な成果を得た. 平成7年度には,不確かさを定量化する手法やモデル集合の概念の定式化を行なった.具体的には,ゲインの上界と有限長の入出力データが与えられているとき,これと整合するすべての伝達関数の集合をモデル集合と定め,さらに関数論的手法によってこの集合を求めるアルゴリズムを開発した.また,制御に関しても,「二次安定化」の手法が適用できるモデル集合のクラスを時変システムの範囲に拡張することができた. 平成8年度には,モデル集合の同定に関してさらに深い成果を得,これらの成果をロバスト制御の手法に結び付けることができた.すなわち,ユークリッドノルムに基づくモデル集合の同定法の提案,伝達関数が相反行列となるシステムに関する構造化特異値の性質に関する研究などを行なった.さらに,前年度得ていた二次安定化に関する手法を拡張すると,制御系にLyapunov関数の推定という興味ある性質を持たせられることを示した.
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