研究概要 |
本研究は,交通計画上望ましい/許容できるような状態として"安定的なネットワーク均衡状態"(非渋滞領域においてネットワーク・パフォーマンスと需要が均衡した状態)を定義し,"それを達成するためには如何なる方策があり得るか?"という問題を考える.そして,そのような状態を保証するための方策として考えられる3種類の自然な交通施策問題を設定し解析するものである.本研究では,まず,安定的均衡状態を保証するための方策として3種類の自然な施策問題:1)交通パフォーマンス曲線の上方シフト問題="混雑料金問題",2)交通需要曲線の右シフト問題="容量増強問題",3)交通需要曲線の左シフト問題=最大ネットワーク容量問題;を一般的な交通ネットワーク上で定義し,問題を数理的に表現・整理した.次いで,1)については,前提とするフロー・パターン記述モデルを利用者均衡,確率的均衡,弾性需要型確率的均衡の順に一般化しながら,各々の場合に対応する定式化・解析を行った.いずれの場合についても,等価な変分不等式問題を構成できることや解の存在・一意性等の基本特性が明らかになった.2)については,flow independentな配分と各リングでの容量決定部分問題に分解した問題に帰着可能であることを明らかにした.3)については,基本的な問題は,適当なネットワーク変換により固定需要型均衡配分と同型式の数理計画問題に帰着可能であることを明らかにした.また,その結果から,解の一意性等についての解析を行うと同時に,従来の各種関連問題の関係を理論的に明確化した.さらに,交通需要を決める枠組みをより一般化するために立地を考慮した立地・交通同時均衡モデルを開発した上で,最大立地量問題についても同様の解析を行った.最後に,1)〜3)のいずれについても,大規模ネットワークで適用可能な計算アルゴリズムを開発し,数値実験により,その収束性/効率性を確認した.
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