研究概要 |
本研究の目的は,建築構造物中の柱材が,一定軸力下で繰返し曲げを受ける時の,耐力および変形性能に及ぼす軸力の影響を明らかにすることである. 高軸力下にある柱材は曲げ破壊する場合でも,変形能力は小さく粘りのない脆性的な挙動を示すことが知られている.したがって,現行の「鉄骨鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説」では,短期荷重時に靱性を期待する柱に対しては,柱の部材角にして1%程度の変形能力を確保できる軸力の制限値を規定している.しかしながら,規定された制限軸力は,ある特定の変形能力を保証しているに過ぎず,設計の自由度にかける. 本研究では,コンクリート充填角形鋼管柱,コンクリート充填円形鋼管柱,角形鋼管柱,円形鋼管柱および鉄骨鉄筋コンクリート柱が,一定軸力下で繰返し曲げを受けるときの変形性能に及ぼす軸力の影響を調べるために,軸力比を主要な実験変数に採り,系統的な実験を行い,柱材の構造性能に及ぼす軸力の大きさの影響を明らかにした. 実験の概要は以下の通りである.角形鋼管の幅厚比,柱の軸力比,載荷方法を実験変数に取り,一定軸力と曲げモーメントを受けるコンクリート充填角形鋼管および中空鋼管の実験を計36体行った.円形鋼管の径厚比,柱の軸力比,載荷方法を実験変数に取り,コンクリート充填円形鋼管および中空鋼管の実験を計40体行った.柱の鉄骨比,軸力比,載荷方法を実験変数にとりSRC柱の実験を22体行った. コンクリート充填鋼管柱,SRC柱,鋼管柱の軸力を広範囲に変化させた系統的な基礎データを集積し,実験結果から,最大耐力や変形性能に及ぼす軸力比の影響を考察した.また実験結果より設定した柱部材角に対して許容できる軸圧縮力を示した.
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