研究概要 |
カオリン鉱物を1000℃付近で熱処理してその粒子内部に非晶質シリカをマトリックスとし数nmの超微粒子のγアルミナが規則的に分散した微細組織を形成させた後,これをアルカリ水溶液を用いて非晶質シリカを選択溶解して大きさのそろった細孔をその形骸粒子内部に形成させる新規な多孔体合成法,選択溶解法によりγアルミナメソ多孔体を作製し,その多孔体特性,特に細孔径分布について調べた.多孔体の作製条件として,出発試料,加熱処理温度,選択溶解処理の温度,時間,アルカリの種類,濃度などについて検討し,それぞれの調製条件のもとで得られる多孔体の比表面積と細孔径分布を測定し,出発試料に米国ジョージア産のカオリナイト,加熱処理温度を1000℃,選択溶解処理温度を90℃,処理時間を1時間,KOH濃度を4mol/1で処理すると細孔径分布がシャープで数nmの大きさの均一なメソ細孔をもつ多孔体が得られることが分かった. この多孔体はこれまでに知られているγアルミナ多孔体と比較して細孔径がより均一で細孔容積が大きかった.室温における水蒸気の吸着・脱着等温線を調べたところ,吸着側では相対湿度が80%で急峻に吸着量が増大し,最大で約600ml(STP)/gの吸着量を示し,一方,脱着側では70%から急に吸着量が減少する特徴をもっていた.これは細孔径が均一なため,吸着した水蒸気分子の凝縮が狭い相対湿度条件で起きることに起因した結果と解釈でき,狙い通りの分子ふるい作用特性が期待できる多孔体が作製できていると判断された.
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