研究概要 |
高温の金属平板面に衝突する液滴の多重露光撮影を2台のマイクロフラッシュを用いて行ない,多数の画像から統計的手法を用いて液滴の変形挙動を把握することを試みた.その結果,ウェーバー数が小さい場合,液滴は平板上で円盤状に広がり,最大径に達し,収縮し,最後の平板面から反発した.ウェーバー数を大きくしていくと,液的は最大径に広がった後,収縮過程で幾つかの小液的に分裂し,その後,それらは合体することが確認された.ウェーバー数をさらに大きくしていくと,液滴は拡大過程で小液滴に分裂し,半径方向外側に飛散することが明らかになった.また,平板面の材料としてインコネル,シリコンおよびステンレスを用い,平板面の材質が液滴の変形挙動に及ぼす影響を調査した.その結果,液滴が分裂しない低ウェーバー数領域では,平板の材質の影響はほとんぼ確認されなかったものの,反発と分裂現象の境界を与える臨界ウェーバー数は材料によって変化することを明らかにした. また,数値解析によって液滴の変形メカニズムの解明を行なった.支配方程式系に2次元軸対称非圧縮性粘性流体のNavier-Stoke方程式を採用し,有限差分法を用いて流れ場を計算するコンピュータープログラムを作成した。これには,粘性,重力および表面張力の効果を考慮した.まず,常温平板に衝突する液滴の変形挙動を解析し,得られた数値解を実験値と比較したところ,両者には良好な一致が見られた.さらに,ライデンフロスト温度以上の平板面に衝突する液滴の変形挙動の解析を行なった.この場合も,計算値は実験値と良好に対応し,本研究で構築した数学モデルの妥当性が検証された.また,本数値解析結果から,液滴に変形挙動は表面張力に大きく支配されていることが明らかになった.
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