研究概要 |
半導体素子洗浄用超純水の循環利用プロセス開発を最終目標とする研究の一環として,本研究ではまず,研究代表者の従来の研究の延長である遠紫外線185nm光及び紫外線254nm光を発する低圧水銀灯照射による,酸素を含まない水に微量溶存している有機物を直接分解するプロセスの可能性を検討した.そして次に,この結果を遠紫外線172nmのみを発するエキシマー光を光源とした場合の実験結果と比較することにより遠紫外線の効果を定量的に把握することを試みた.メタノールをTOC源とした実験結果から,反応中間体の同定が十分ではないが酸素が存在しなくてもTOCを完全分解することができることが分かった.酸素共存の場合はヒドロキシルラジカルが重要な働きをするのに対し,ここでは有機物の直接分解の効果が大きい. ところで,実用的な観点からは酸素が含まれている系の分解特性の定量的な把握も重要である.そこで,本研究では従来から研究代表者がいくつかの知見を得てきた酸素共存下でのTOCの遠紫外線分解,いわゆる遠(真空)紫外線酸化分解プロセスについて速度論的な観点から定量的な反応モデルを構築することも検討項目に加えた.本報告書で述べてきたとおり,本科研費補助金で新規購入できたTOC分析装置及びエキシマー光源を駆使して精度の高いデータを取得することができ,また遠紫外線のみの効果を定量的に評価することができた.プロセス解析にあたってはメタノール,ホルムアルデヒド,ギ酸に関わる量論式基準の速度式をもとに現在シミュレーション中であり,研究成果は近く発表の予定である。
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