研究概要 |
促進輸送膜の透過性,膜安定性は,キャリヤ-を保持する膜(支持膜)の構造や電荷の有無などに依存し,膜構造を精密に抑制することにより大幅な膜性能の向上が期待される.本研究では,以下の成果が得られた. 1.キャリヤ-の反応特性(反応速度,平衡定数)が溶質の透過速度に与える影響を,アミンをキャリヤ-とするCO_2の促進輸送について検討し,透過速度の定式化に成功した.この解析から,適度の大きさの平衡定数を有するアミンが効果的なCO_2のキャリヤ-となることが判明し,実験的にもこれを確認した. 2.電荷を有しない多孔性支持膜の特性が促進輸送速度に及ぼす影響を促進輸送理論に基づいて検討し,厚み,多孔度,屈曲係数が重要な因子であることを理論的ならびに実験的に明らかにした. 3.プラズマグラフト重合法によりアクリル酸を多孔性ポリエチレン膜にグラフトして作製した多孔性イオン交換膜は,エチレンジアミンのようなカチオン性キャリヤ-を静電相互作用により安定に保持でき,ポリアクリル酸グラフト鎖の高含水率に起因する溶質の高い拡散性と高イオン基濃度に起因する高いキャリヤ-濃度により極めて高いCO_2透過選択性が得られた.電荷を有する支持膜中のキャリヤ-の拡散係数などを考慮した促進輸送理論により,CO_2の透過速度を説明することができた. 4. 3と同様の手法によりスルホン酸基を有するモノマーをグラフトして作製した多孔性カチオン交換膜は,銀イオンをキャリヤ-とするエチレンの促進輸送支持膜として高い性能を示した. 5.含水PVAゲル膜を支持膜とする場合について,ゲルの架橋比,含水率,ゲル中の不凍水の比率などが透過性に与える影響をDSC測定,時間遅れ法による拡散係数,溶解度の測定などを基に検討することができた.
|