研究概要 |
近年、規則性のある分子配列を持つ結晶性層状化合物が新しい機能性材料として注目を浴びている。層状化合物は限られた二次元層空間をもつ構造材料であることから、層間に各種の機能を植え付けることができれば従来になかった新しいタイプの分子形状選択性をもつ機能性材料を提供できることになる。本研究で合成した亜リン酸(フォスフォン酸)ジルコニウムはZr(O_3PR)_2のような一般式で表わすことができ、ジルコニウム原子によって形成された平面の上下に、リン酸基四面体が規則正しく配列した構造からなる層状化合物である。この化合物は層間に向き合って存在するアルキル基(R)を様々な化学的機能を持つ官能基に置き換えることが可能であることが、特徴である。その導入された官能基の種類によって、層間距離を制御し、酸性基や疎水性基を導入することを目的とした。 結晶性層状化合物は、各種亜リン酸化合物と4価のジルコニウム塩から無定形フォスフォン酸ジルコニウムを合成し、フッ酸(HF)で処理することで得られる。導入した官能基(フォスフォン酸基)はジルコニウム層からぶら下がった構造をとっているので、ペンダント体と呼ばれている。ペンダントがかさ高いものであれば、層間距離は拡大し、より広い層空間を作ることが可能である。また、導入する官能基の性質によって、イオン交換能、強い酸性、疎水性などの機能を層間に付与することが可能である。 また、ジフォスフォン酸が合成できれば、層同士を分子状ピラ-で架橋することも可能である。導入するペンダントタイプのフォスフォン酸基としては、-OH,-CH_2COOH,-CH_2SO_3Hなどの酸性基、また、疎水性基として-CH_3,-C_6H_5,-C_<12>H_<25>,-C_<22>H_<45>など、さらにビラ-タイプのフォスフォン酸基として-C_<10>H_<20>-,-C_<12>H_<24>-などを単独および複合化した形で導入した各種フォスフォン酸ジルコニウム誘導体を合成した。合成した層状結晶はフォスフォン酸基Rのかさ高さに応じて層間距離は異なるが、^<31>P,^<13>Cの固体高分解能MASNMR,FTIR,XRDなどにより、構造解析を行い、併せてアルコール類のエステル化反応をモデルとして触媒材料としての検討を行い、液体硫酸を触媒とするよりも高い触媒活性を示すフォスフォン酸ジルコニウム触媒が得られた。
|