研究概要 |
放射線の解像度は可視紫外光よりもはるかに高いため,放射線は将来のリソグラフィー用の光源と考えられている。レジスト用ポリマーの放射線化学反応の研究は,このため,集積電子回路の発展のうえで重要である。本研究では,代表的なポジ型レジストであるポリメタクリル酸メチルおよびポリシランについて,その放射線分解機構を明らかにし,放射線リソグラフィーに必要なレジスト用ポリマーの設計指針を得た。本研究から得られた結果を要約すると以下のようになる。 1)ポリマーの主鎖切断はポリマーが放射線エネルギーを吸収すると同時には起きない。放射線によって直接生じるのは,主としてC-H結合の切断であり,固体固有のケージ効果のため,たとえ放射線照射で直接主鎖が切断されても,これは即座に修復されてしまう。 2)C-H結合の切断などによって生じた高分子ラジカルは,その後熱エネルギーの助けを借りて主鎖切断を引き起こす。高分子ラジカルが不純物や添加物などによって安定化されると,主鎖切断は阻害される。 (3)主鎖がC-C結合からなる通常の高分子では,放射線による主鎖切断は統計的に(ランダムに)生じるが,主鎖がSi-Si結合からなるポリシランでは,主鎖のσ共役性のため,吸収された放射線エネルギーは主鎖内を移動し,弱い結合部を選択的に破壊する。よってσ共役性の高い分子を用いれば,主鎖内のあらかじめ決められた位置で主鎖切断を起こさせることもできる。
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