研究概要 |
複素環化合物の有用な合成手段である1,3-双極性環状付加反応の不斉触媒化を目的として、アリル系アルコールを親双極子として用いるニトリルオキシドおよびニトロン双極子との反応についての研究を行った。その結果、以下の知見を得た。 1)ベンゾニトリルオキシドとアリル系アルコールとの反応は、マグネシウムイオン触媒下において大きく加速されることを見い出した。 2)α位にキラル中心をもつアリル系アルコールとのマグネシウムイオン触媒下での反応では、高いシン選択性が発現する。 3)γ位に置換基をもつ基質とのマグネシウムイオン触媒下での反応では、5位にヒドロキシメチル基をもつイソオキサゾリンがレギオ選択的に生成する。 4)マグネシウムイオン触媒下での反応の加速は、置換基を多くもつ基質ほど顕著で、γ位が2つのメチル基で置換された場合には16000倍の反応加速が認められた。 5)マグネシウムイオン触媒下のメシトニトリルオキシドとアリルアルコールとの反応において34回の触媒サイクルが成立する。 6)しかし、同じ反応に化学量論量の(R,R)-1,2-ジフェニル-1,2-エタンジオールのビス(ジフェニルメチルシリル)エーテルを共存させても、不斉誘起は認められなかった。 7)その他に、(R,R)-1,2-ジフェニル-1,2-エタンジオールのビス(ジフェニルメチル)エーテル、ビス(トリフェニルメチル)エーテルなどの新規キラル配位子を合成した。 8)アリルアルコールの代わりにクロチルアルコールを用い、環状付加反応のレギオ選択性を調べる実験では、ニトリルオキシドの種類に関係なくマグネシウムイオン共存下での反応が禁止された。 9)DBFOXキラル配位子で修飾されたマグネシウムイオン触媒下では、アリルアルコールとのニトロン環状付加反応が高い不斉誘起を示したが、ニトリルオキシド環状付加反応はやはり大きく減速した。
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