研究概要 |
われわれはブタジエンテロマ-酢酸2,7-オクタジエニルを出発物とする、Pd(0)触媒による環化-カルボニル化に成功して以来、π-アリルパラジウム中間体への分子内アルケン挿入(Pallada-ene反応とも見倣される)を鍵段階に含む合成反応を展開してきた。この基本の反応では酢酸溶媒を用いる限りアルケン挿入-環化が優先し、直鎖状のカルボニル化生成物を全く生じない。また、5員環形成に伴うintraannulardiastereoselectionがトランス優勢である特色を有している。しかしながら、酢酸6-ビニル-2,7,8-ノナトリエニルを基質としてPd(0)触媒での環化-カルボニル化を試みたところ、生成物につぎの3点の特徴が認められた。すなわち、i)末端アルケンより1,2-ジエン(アレン)部位が選択的に挿入環化に関与したこと、ii)5員環のみが形成される結果、分子間でのπ-アリルパラジウムとアレンの反応とは位置選択性が異なり、ビニルパラジウム中間体を形成したこと、およびiii)intraannular diastereoselectionが一転してシスとなったことである。この結果に基づいて、1,2-ジエンの挿入環化における立体および位置選択性を種々の酢酸2,7,8-および2,6,7-トリエン系基質の環化-カルボニル化について検討した。酢酸2,6,7-トリエン系からは5員環形成に伴いこの環上で新たなπ-アリルパラジウム中間体が形成されることが分かった。さらに合成的見地から、モノテルペノイドの一種isoiridomyrmecinの合成と、タンデムな環化反応(すなわち、分子内Heck反応とカルボニル化の繰り返し)を活用した4環性エノンを一段階で合成できることを示した。
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