研究概要 |
本研究の目的は,飽和状態に近い超流動ヘリウム中で起こる,大きな可聴域での騒音と機械的振動を伴う所謂ノイジ-膜沸騰現象のメカニズムを探ることにある.この状態で誘起される機械的振動は極端に大きくマグネット等にとり有害であり,又伝熱性も劣ることから,併せてその制御法についても考察することを目的とした.このために,可視化法や超伝導温度センサによる温度計測,さらには圧力測定などを相補的に応用して現象の理解を定量的なレベルにまで高めることを目指した実験を遂行し,次の様な結果を得た. 1.飽和状態〜弱サブク-ル状態における超流動ヘリウム中には,静圧の小さな方から順にサイレント膜沸騰,ノイジ-膜沸騰,サブク-ル膜沸騰(サブク-ル=静圧がPλよりも大きい=超流動ヘリウム中での膜沸騰の略称)の3モードがある.ノイジ-膜沸騰現象の開始条件のパラメータ(温度,静圧,ヒ-タサイズ)依存性はほぼ把握できた.又,ノイズ発生は,大型気泡の消失後の爆発的蒸発によるものであることも明らかとなった. 2.一定発熱量に重畳する正弦的に変動する熱擾乱を与えると,サイレントからノイジ-膜沸騰への遷移が誘起され,これがノイズ誘起性の不安定現象であることが分かった. 3.膜沸騰発生時に誘起される音響振動に関する周波数分析結果に注目してその成因が考察され,サブク-ル膜沸騰時の高周波成分は,液柱振動によるということが示された. 4.サブク-ル超流動ヘリウム中におけるノイジ-膜沸騰からサブク-ル膜沸騰現象への移行の様子が明らかとなった. 5.ノイジ-膜沸騰現象の発生メカニズムを記述する物理・数学モデルの構築にまでは至らなかったが,その為の十分な実証データの蓄積は達せられた.
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