研究概要 |
本研究では,複屈折光ファイバの知的材料・構造への応用,とくにモード領域分布型複屈折光ファイバセンサシステムの知的材料・構造への応用とその基礎理論の構築を目的とし,シングルモード複屈折光ファイバに任意の3次元応力が作用した場合に生じる複屈折およびモード結合への影響を理論的・実験的に明らかにした. まず,光ファイバ軸方向引張り荷重,純粋曲げ,ねじり,横方向荷重について,光ファイバ単体に作用させた場合と光ファイバが埋め込まれている場合に生じる複屈折・モード結合を導出し,比較した.とくに応力分布を光ファイバの中心で展開し2次の項まで取ったモード結合係数を求める実用上有用な式を導出した. 次に,複屈折光ファイバのモード結合が断面内応力分布に最も影響を受けることを利用して,光ファイバに横方向圧縮荷重を加えた場合の荷重とモード結合の関係を明らかにし,光ファイバ荷重センサの開発を行った.安定した,再現性のある定量的測定をするために必要なセンサモジュール仕様を以下のように決定した.(1)光ファイバの被膜の無い部分を保護する.(2)組込み負荷ヘッドにより,単体でセンサとして機能する.(3)光ファイバに垂直に荷重を作用させる.(4)負荷角度を45°で固定する.(5)負荷区間長さを1mmで固定する.これをもとに異なるタイプのセンサモジュール・モデルを設計・製作し,その性能試験を行い,実用的に十分な安定性,再現性のある出力を得ることに成功した. さらに,クラック・切欠きによる集中応力の検出を試みた.クラックのモードI開口応力とモードII開口応力によってクラック幅に対する感度が異なること,光ファイバの基底モードのビ-ト長と同程度の大きさのクラックに対して感度が大きく,ビ-ト長の5%以下の大きさのクラックに対しては感度が小さいことが明らかになった.
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