研究概要 |
適用変調方式とは適用変調方式とは,伝搬路の状況に応じて最適な変調パラメータを選択し,情報を伝送する方式であり,移動通信における高速・高品質伝送実現の有効な手段として期待されている方式である.本研究は,適応変調方式実現のための要素技術の確立,モデムの構成法,及び実システムへ応用した場合の効果的を検討することを目的としている. 平成7年度は,伝搬状況推移技術,変調パラメータ推定技術などの要素技術の確立とモデムの構成法について検討を行った.その結果,比較的簡易かつ高い精度で伝搬路状況の推定や変調パラメータの推定が実現できることが分かった.また,各変調方式で共通化できる部分を検討した結果,従来の多値QAMモデムに付加回路をつけるだけで適応変調モデムが構成できることが分かった. 平成8年度は,平成7年度の検討結果を踏まえて,適応変調方式の基本伝送特性の検討のため1対の適応変調装置を計算機シミュレーションで実現化し,様々な伝搬環境において伝送特性を検討した.その結果,移動通信の伝搬環境としてかなり厳しい条件下においても,適応変調方式の変調パラメータ制御機能が伝搬環境の影響を緩和するように働き,従来の伝送方式と比べて伝送特性を大きく向上できることが確認できた. 次に,適応変調方式の応用として,適応変調を回路交換システムとパケット交換システムに応用を想定し,適応変調回路交換システムのシステム容量及び適応変調パケット交換システムのスループット特性について検討した. 回線交換システムにおいては,音声チャネル換算でシステム容量を評価したところ,適応変調方式を用いることにより,伝搬環境が良い場合に周波数利用効率の高い変調方式を適用できるので,従来システムと比べて約3.5倍の大容量化が実現できることが確認できた. 次に,パケット交換システムに適応変調方式を用いる場合,伝搬環境が良い場合にはビットレートを高くすることによってチャネルの占有時間を短縮することができ,伝搬環境の悪い場合にもパケットエラーの低減のよるパケット成功率が高まることにより,従来システムに比べて2倍以上のスループットが向上可能であることを確認した. 以上より,適用変調方式は移動通信システムの高品質化、大容量化に有効であること,及び,その適用分野として,回路交換とパケット交換が混在すると予想される将来のマルチメディア無線通信システムの伝送方式として有望であることが結論づけられた.
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