研究概要 |
生物が行うエネルギー変換機構,情報伝達機構のかなめとなって本質的役割を逐しているのが生体膜と呼ばれるタンパク質と脂質からなる脂質二重膜である。今回、我々はエネルギー変換膜の代表的生体膜である光合成膜を取り上げ、そこで機能しているタンパク質と生体膜の作用機構を解明し、太陽光エネルギーの高効率利用を目指した応用のための基礎的知見を得る研究を行った。生物による太陽光エネルギーの化学エネルギーATP(アデノシン三リン酸)への変換には,(1)光を捕獲し、励起エネルギーに変換するアンテナ錯体,(2)励起エネルギーを電気化学的エネルギーに変換し、膜間プロトン勾配を形成する反応中心電子伝達錯体,そして(3)膜間ポテンシャルを使ってATPを合成するATP合成酵素群が存在する。本研究においては(1)クロロゾームアンテナおよび膜内アンテナの構造解明,(2)クロロゾーンアンテナおよび膜内アンテナにおける励起エネルギー移動反応の解析,(3)固体高分解能^<13>CNMRによるクロロゾームアンテナにおけるバクテリオクロロフィルc分子の会合構造の特定,(4)反応中心の一次構造の解析と光電変換作用制御にかかわり重要な反応中心スペシャルペア-周りの精密構造の解明,(5)光との相互作用で重要な光合成色素の構造(特に電子構造と会合構造),そして(6)膜構造を明らかにした。さらに、三要素を含み高い光リン酸化活性を示す生体膜を小胞として作製し、その小胞の性質と活性の関係を明らかにし、半生体人工光合成系構築のための基礎を築いた。
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