研究概要 |
8-キノリノラト誘導体-白金(II)錯体の発光特性をミクロな場や環境の識別と評価に利用することを目的とする.生体内ミクロ環境であるDNAとこれら錯体との相互作用を環境の変化として検出定量化しようとするものである. 期間中は8-キノリノールを基本骨格とする配位子とミセルの探索実験を行なった. 1.8-キノリノラト誘導体として,基本骨格の8-キノリノール,スルホン基を導入して水溶化した5-スルホ8-キノリノール,およびこれに重原子ヨウ素を導入したフェロン,また陽イオン性白金(II)錯体を生成しうる三座8-キノリノラト誘導体である2-(2′-ヒドロキシフェニル)-8-キノリノールを検討した.8-キノリノラト誘導体-白金(II)錯体は界面活性剤ミセル媒体中で強い赤色発光を示す.特にフェロン白金(II)錯体では発光は陽イオン性界面活性剤中,溶存酸素除去剤の存在下で,純水中酸素除去剤なしのものと比較して,約34倍もの著しい増感を受けた.また発光寿命の測定を行った結果,その寿命は数十μsにもおよび,これは他の金属錯体の溶液系でのnsレベルの発光寿命と比較してかなりの長寿命である.以上のことより,本錯体の発光が配位子中心のリン光性であることが示された. 2.界面活性剤としては,これら錯体が無電荷およびアニオン性であることを考慮に入れ,第4級アンモニウムタイプのカチオン性界面活性剤,ポリオキシエチレン系および糖基を有する非イオン性界面活性剤について発光増感現象の検討を行なった.どの界面活性剤においても,発光の発現には臨界ミセル濃度(CMC)以上の存在が必要であった.非イオン性界面活性剤である,糖を親水基として疎水性の高いミセルを形成するn-ドデシル-β-D-マルトサイドは,検討した界面活性剤中でもっとも優れた増感効果を示すことを発見した.
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