研究概要 |
本研究はサツマイモのスクロースシンターゼ(SUS)に着目し,その一次構造や塊根形成過程における発現を検討することにより,サツマイモのデンプン合成におけるSUSの役割を明らかにする目的で行った.得られた結果は以下の通りである.1.サツマイモのSUSの予想されるアミノ酸配列はジャガイモのSUSと高い相同性(91%)を示したが,同じ双子葉植物のシロイヌナズナとの相同性(69%)は単子葉植物のイネやトウモロコシのSUSと相同性(75%)よりも低い値を示した.2.サツマイモの器官別のSUS活性は塊根で最も高く,葉柄,ほふく茎及び細根では低く,葉身では検出できなかった.SUSのcDNA断片をプローブとしたノーザンブロット分析を行ったところ,塊根,葉柄,ほふく茎及び細根では約2.4kbpのバンドが検出されたが,葉身では検出されなかった.SUSのmRNAは塊根で最も多く,SUS活性と同様な結果が得られた.3.苗植付け後の根のSUS活性及びmRNAレベルは経時的に増加し,根の肥大やデンプンの合成過程と一致した.4.SUSの発現と根内の反応基質やその代謝産物との関係を検討するため,苗植付け後の根のスクロース,グルコース及びフルクトース含量を経時的に測定した.スクロース含量は早期に増加し,それを追うようにSUS活性は増加した.グルコースやフルクトースはスクロースに比べて含量が低く,SUS活性の経時的変化と関連性が認められなかった.5.サツマイモの葉-葉柄部を切り取り,葉柄切断部を6%スクロース溶液に浸しておくと葉柄のSUS活性は増加した.6.以上の結果より,サツマイモでは塊根の形成やデンプン合成にSUSが重要な役割を果たしており,転流物質であるスクロースによってSUSの発現が誘導され,その発現はmRNAレベルで調節されていることが明らかとなった.
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