研究概要 |
園芸作物遺伝子源の凍結保存技術は、組織培養法による植物体再生技術に、組織の凍結・融解後の生存を可能にする各種の技術を組み合わせることによって成り立っている。本研究は、これらの技術の基礎となる事象について検討したものである。 1.組織培養法による植物体再生系の作出(1),サルナシでは、新梢節部分切片の培養によって得た培養体(幼植物)の節部切片を暗所で黄化培養することにより、短期間の大量増殖が可能であった。(2),マタタビ葉柄の培養によって得た培養体シュートをNAA1μMを添加したMiller培地に移植すると、全て発根し、幼植物となった。(3),ミヤママタタビでは、新梢切片をBW培地にCPPU1μM以上添加して培養すると、シュートが形成され、シュートをMiller培地+NAA1μMで培養すると、発根し、幼植物になった。 2.組織の耐凍性の変化(1),ハスカップの野外植物体の茎頂では、秋から冬にかけての低温馴化期に耐凍性がたかくなり、含水率が低下するとともに三糖類が多くなることが確認された。また、培養体の低温処理を行うと、節部組織の耐凍性が高くなった。(2),アスパラガスの野外植物体の茎頂では、前培養を行うと、糖の取込みおよび脱水が促進され、耐凍性が高くなることがわかった。 3.凍結・融解後における組織の生存(1),野外サルナシの側芽を12月下旬に採取し、DMSO15%およびグリセリン8Mを含む凍結媒液中に浸漬し、-30℃まで緩慢凍結脱水を行ったのち、液体窒素中で超低温凍結保存すると、凍結・融解後に生存すること(生存率50%)が明らかになった。(2),低温馴化処理(5℃・4週間+0℃・2週間)後の培養体シュートから取り出した側芽の凍結・融解後の生存率は向上した。また、側芽の前培養(糖高濃度添加培地使用・2日間)を行うと、生存率が高くなることがわかった。本研究により明らかとなった事象は、今後の遺伝子源凍結保存に寄与するものである。
|