研究概要 |
本研究では、酵母細胞壁構成分の合成と局在化の機構を明らかにするため変異株とクローン化した遺伝子について解析した。(A)マンナン糖鎖の合成に関わるVIG遺伝子の産物については、Vig9蛋白質がGDP-マンノース合成酵素であることを証明しその性質を明らかにした。ポリクローナル抗体或はエピトープタグ標識により、膜蛋白質のVig1/Vanl,Vig3/Anpl,Vig4/Van2,Vig6/Mnn9はいずれもゴルジ体と考えられるオルガネラに存在することを示した。グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)との融合蛋白質GST-Vig1を発現させた膜を可溶化してグルタチオン・カラムによってアフィニティ精製したところ、融合蛋白質でないVig1,Vig6,糖転移酵素であることが知られているVig7/Och1が、GST-Vig1とともに結合し回収されたこと等から、これらが蛋白質-蛋白質の相互作用による構造体を形成していることが明らかになった。今後は大量調製によりこの構造体の構成と機能を調べることが可能である。(B)浸透圧保護剤依存の脆弱細胞変異株JS23及びJS30の変異を相補する遺伝子をクローン化して塩基配列を決定したところ、JS23の変異はPKC1遺伝子、JS30の変異はVIG9遺伝子におきていることが明らかになった。いずれも形質はこれまでになく激しいものであった。vig-9-3変異については、変異塩基の決定、変異酵素の活性測定等でも確認した。(C)GPI-アンカー修飾シグナル配列をもつホスファターゼPhoKMについては、プロモータをGAPに換えて発現量を増加させ、更にEndoH処理でN糖鎖を除去してからウエスタン・ブロットを行うことにより、免疫学的に蛋白質として検出が可能になった。熱SDS処理により非共有結合で細胞壁に結合している成分を除いたグルカンにPhoKMが結合していることを証明した。これよりPhoKMの鋭敏な活性検定で細胞壁局在機構に関わる変異を探索することが可能である。実際に、GPI-アンカーの合成に欠損が及ぶvig9-3等の変異株ではPhoKMが培地中に著量漏出するのを簡易なプレート検定によって検出できることを示した。
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