研究概要 |
体表の防禦機構を突破したことが,体内の防禦機構発現にどのような意味をもつのかを探る端緒として,体表のレクチンに注目し,その精製を進め,白血球の貪食作用におよぼす影響について検討した. 材料としてウナギを用い,レクチン活性はウサギ赤血球凝集活性で測定した.粘液はその主成分である酸性粘液多糖類が精製の障害となるため,できるだけ取り除いてから上皮細胞をかき取り,抽出,塩析,ゲル濾過によりほぼ純粋なレクチンが得た.このレクチンはアジ化ナトリウム存在下4℃で安定であった. レクチンの体内の白血球に対するオプソニン作用を調べるため,ウナギ好中球によるレクチン結合ウサギ赤血球の貪食を調べた.ウサギ赤血球とレクチンとを混和し凝集反応を起こさせた後,充分に洗浄してレクチン結合ウサギ赤血球を得た.末梢血から分離したウナギ好中球をこのウサギ赤血球と反応させ,好中球による貪良を観察した結果,レクチン結合ウサギ赤血球に対する貪食率,貪食数の増加が認められ,それらはレクチン濃度依存的であった.赤血球に対するレクチン処理時に糖を添加した結果,レクチンの阻害糖であるラクトースを添加した場合に貪食も阻害された.以上より,ウナギ体表粘液レクチンが自己生体内の好中球に対するオプソンニン作用をもつことが明らかになった.白血球のオプソニン化赤血球貪食は,共存するウナギリンパ球の影響を受け,促進される場合と抑制される場合があった.これはレクチンに反応したリンパ球による貪食調節を示唆している. 以上,ウナギ体表粘液レクチンには自己生体内の白血球に対するオプソニン活性が認められ,体表の防御因子と体内の防御機構との関連の一端が明らかとなった.またリンパ球の関与や,好中球自体の変化も関係し,レクチンの作用は体内の防御系と様々な形で複雑に連関しているものと推察された.
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