研究概要 |
坐りと戻りはねり製品の様な魚肉加熱ゲルの形成時に付随して起きるゲル形成の促進とゲルの脆弱化現象できるが,それらの機構はまだ充分に解明されていない。平成7年度は良く坐りを起こすスケトウダラと全く坐らないサケ肉糊を用いて比較研究したところ,坐りに関しては以下の事を明らかにした: 肉糊中のミオシンはその加熱ゲル形成に先立って,低温感熱によって秩序ある変性凝集と内因性トランスグルタミナーゼ(TGase)による分枝構造を有するミオシン架橋重合体を形成するが,これらの反応が坐り発現に必須である。平成8年度はこの点をさらに明確にするためにスケトウダラすり身の変性に伴うゲル形成能の消失と,すり身中のTGase活性の失活との関係を追求したところ,ミオシンが変性すると外部からTGaseを添加してもゲル形成能は完全には回復しないが,ミオシンが未変性でもTGaseが無ければ坐りを起こさないものもTGaseの添加で坐りは全く起きないことを証明した。コイ・アクトミオシンの肉糊のように全く坐りが導入できることが示された。この方法は坐らないためにねり製品原料として未利用な淡水魚等の利用上重要な新技術となろう。 戻りについては肉糊のプロテアーゼ阻害剤を添加する研究から,坐り中にもプロテアーゼが作用して戻りの一因となっていることを初めて明確に示した。高温での火坐りと併せて考察すると,戻りにはミオシン分解が加熱ゲル化に先行して起きる場合と,ゲル形成後にミオシンが分解されて起きる2つの機構があり,後者が典型的な戻り現象を起こすことを示した。またミオシン重鎖とその分解物のTGaseによる架橋重合体についてもSDS-PAGEで同定した。アクトミオシンの構造変化による戻りについては動的粘弾性の測定などによる研究を継続中である。
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