研究概要 |
前年度の研究で精巣機能に関与するホルモンの重要性が指摘されたので、Holstein雄牛(515頭,0.2〜7歳)の血清中のInhibin,FSH,LH及びテストステロン濃度をRIAで測定し,これらの加齢変化を明らかにした。Inhibinは1歳未満子牛で最も高く,その後,加齢と共に減少した。Inhibinと対照的に,FSHは1歳以下の子牛で最も低く,以後,加齢と共に増加した。LHは0.2歳群で最も低く加齢と共に増加する傾向がうかがわれた。テストステロンは加齢と共に確実に増加して認められた。Inhibinは春期発動前においてFSH濃度と負の相関を示し,inhibinとFSH濃度の相関関係とテストステロン濃度の上昇が春期発動の発現の調節に関係していることが示唆された。前記の研究で春期発動前の変化の重要性が示唆されたので,春期発動前の変化を詳細に検索し次の所見を得た。血清中ホルモン濃度;Inhibinは2ヵ月まで高く,春期発動後低下した。FSHは出生時低く,2ヵ月例で一過性の上昇し,春期発動から急激に上昇した。LHは出生時低く,生後1‐2ヵ月で一時的に上昇し,その後安定した。テストステロンは,出生後徐々に上昇し,6ヵ月齢で急激に上昇し,9ヵ月齢で減少した。精巣組織中のインヒビン及びテストステロン濃度;出生後から2ヵ月まではインヒビンは高かったが以後次第に減少した。テストステロンは血清中テストステロンのように加齢による増加は認められなかった。インヒビンの免疫組織化学的検索;インヒビンの免疫組織化学の成績は血清中および精巣組織中インヒビン濃度と一致した。しかし,他の動物で指摘されているインヒビンのライディヒ細胞由来を指示する成績は得られなかった。以上の成績は雄牛での生殖ホルモンの加齢現象を明らかにし,春期発動前の変化を明確にした。
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