研究概要 |
圃場機械の研究においては,作業の結果,その対象となる土に生じる変形,応力状態を把握することが重要である.本研究では,先に代表者らが提案したクロス(十字)または黒丸を描いた直径約5mmのポリエステル製のマ-カを多数,土槽の透明な内壁に配置し,土に追随するこれらのマ-カの動きを観察することにより土の2次元変位を測定する“マ-カ法"の実用化に向けて究明を行い,以下の結果を得た. 1.土槽壁にマ-カを配置し,車輪走行試験を行い,マ-カの動きを観察,撮影した.そのさい,マ-カに対応する部位に,土槽進行方向に垂直向きに細い真直棒を配置し,試験後,掘り起こして,これらの位置と比較することにより,マ-カの追随の難易を調べた。この結果,マ-カとしては,直径5mmの黒丸の中央に一辺1mmで白色の正方形をプリントしたポリエステル製とし,その後部に長さ5mmの突起を付けた形状が妥当であり,また,これらを土の充填前に透明側壁に水で付着させ,乾燥する前に土を入れることにより,土の力学的性状に影響を与えることなく,所期の目的を達し得ることが把握された. 2.マ-カの動きを撮影する具体的方法として,4800個の感光素子が一列に並べられたラインシフトカメラによって撮影し,画像処理する方式により,所期の精度でマ-カの動きを自動的に撮影,記録することができた. 3.隣接するマ-カ点を結んで形成される3角形または4角形要素を対象に,測定されたマ-カ点の変位を適合方程式に代入することにより,各要素内の刻々のひずみ増分(変形勾配の対象部分)および種々のひずみ(Cauchyの微小ひずみおよびGreen (Lagrange)とAlmansi (Euler)の有限ひずみの3種)の自動算定プログラムを作成した. 4.これらの各要素内のひずみ増分を,本研究の代表者が提案した硬・軟化,初期・誘導異方性,滑らかな弾塑性遷移等を考慮した『下負荷面モデル』に基づく土の弾塑性構成式に導入して応力増分を算定/集積して,各要素内の応力を算定する実用プログラムを作成した. 5.以上の変位,ひずみ(増分)および応力の計測/算定過程を自動化して,これらを土壌槽試験において瞬時に出力し得るようオンライン化を実現した.
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