研究概要 |
末梢神経傷害後にその受容野において痛覚過敏状態を呈する末梢神経傷害モデル動物を用いて、神経活性物質の遺伝子発現の変化がどのように中枢神経系に影響を及ぼしているか、特にこれまで全く研究されていない脊髄-後索核-視床系についての詳細な検討が本研究の目的である。 坐骨神経の回りにゆるく糸を巻いて作成する末梢神経傷害モデルラットを作成し、疼痛に関する4種類の行動評価を確立した。Pin click test,von Frey test,themal test,cold testの4種である。hyperalgesiaやallodyniaの程度の著しいラットでおいて、両側の足底にpin clickを数分間繰り返してその2時間後潅流固定、脊髄や後索核でのFos発現を検索すると、同側の脊髄後角でFosの増加、薄束核でのFos発現などが観察された。これは、末梢神経傷害モデル動物において、脊髄や薄束核でのニューロンの興奮性の増加を示している。NMDAレセプター阻害剤のMK‐801やGABA‐Bアゴニストのバクロフェンが、このFos発現を抑制することが明らかとなった。 本モデルにおける抑制性アミノ酸の役割を検討するために、末梢神経傷害モデルラットにおけるGABAやGlycineレセプターの各サブユニットのmRNA発現をin situハイブリダイゼーション法を用いて検索した。その結果、特に大型から中型のDRGニューロンでこれらの抑制性アミノ酸レセプターのmRNA発現の低下が観察された。 上述の末梢神経傷害モデル動物の薄束核ニューロンの電気生理学的興奮性の変化を、細胞外single unit recording法を用いて検討した。その結果、傷害側の薄束核ニューロンでの明らかなbackground dischargeの増加や、刺激後のafterdischargeの増加など、明らかに薄束核ニューロンの興奮性の増加を示す所見が観察された。
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