研究概要 |
本研究は,平成7年,8両年度の2年間に亘り,中枢のバソプレシン(AVP)とその受容体の性質および生理的役割に関して受容体レベルで解明することを目的に検討し,次の結果を得た. (1)ラット脳の海馬など主要部位について,^3H-AVPとV_1/V_2拮抗薬による結合阻害曲線を比較すると,海馬のV_1受容体の性質は必ずしも肝臓の場合と一致しなかったこと,および(2)で述べる受容体mRNAの発現実験の結果との矛盾を考え合わせると,中枢機能に関与するV_1受容体は,少なくとも末梢のV_<1a>受容体とは性質を異にするものであることが示唆された. (2)1腎1クリップによる腎性体液過剰型高血圧ラットの高血圧発症初期に,延髄最後野におけるAVP受容体の発現実験を試みた結果,V_2mRNAの発現を認めた.このことから最後野のV_2受容体が,高血圧症に関与している可能性が示唆された.(Neurosci,Lett.投稿中). (3)脳の視床下部の支配を受けている下垂体前葉からのACTH遊離機構について,ラット下垂体前葉の初代培養細胞を用いて検討した結果,下垂体前葉細胞からのACTH遊離を調節するAVP受容体は,従来のVlaまたはV2とは異なる型であった.しかも,AVP受容体刺激によるACTH遊離は,L型の電位依存性Ca^<2+>チャネルの活性化に伴う細胞内Ca^<2+>の上昇により惹起されることを示唆した.
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