研究概要 |
ホスファチジルコリン(PC)は受容体刺激によって代謝が亢進すると種々の脂質セカンドメッセンジャーが生成するので細胞内情報伝達においても重要である.本研究はPCからのセカンドメッセンジャーの生成,代謝に重要なホスホリパーゼD,およびリゾホスホリパーゼにに焦点を絞り次のような結果を得た.ホスホリパーゼDは 脂肪酸活性化型酵素とGタンパク質活性化型酵素に大別される。我々はブタ肺ミクロソームから脂肪酸活性化型酵素を初めて高度精製することに成功したが,Gタンパク質活性化型酵素についても酵母,ヒマの酵素やヒトPLD1のコンセンサス配列を用いてPCRを行いラット脳,肝臓から計3種のPLDをクローニングしそれぞれを分裂酵母の系で発現することに成功した.配列を比較したところ一つはヒトすでに報告されたhPLD1と同じものであったのでrPLD1と命名した.他の一つはスプライシングアイソフォームであった.両者はPIP_2のほか低分子Gタンパク質ArfとRhoAで活性化を受けた.3番目の酵素は新規の酵素であったのでrPLD2と命名した.rPLD2はPIP_2では活性化されたがArfとRhoAでは活性化されなかった.いっぽうリゾホスホリパーゼはプロティンキナーゼCの活性調節因子の一つであるリゾPCを分解するシグナル遮断酵素である.我々は肝臓,胃粘膜から4つのリゾホスホリパーゼを精製し抗体を作製し抗原性を調べたところリゾホスホリパーゼは互いに組織分布も性質も異なる低分子量のI型酵素(24kd),II型酵素(23kd),および高分子量でトランスアシラーゼ活性を有するIII型酵素(60kd)の3つに分類されることが判明した.I型酵素についてはcDNAクローニングを行い,HL-60細胞が顆粒球に分化する際に誘導を受けること,すなわち分化により発現調節を受けていることを明らかにした.
|