配分額 *注記 |
7,600千円 (直接経費: 7,600千円)
1997年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1996年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1995年度: 4,400千円 (直接経費: 4,400千円)
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研究概要 |
本研究によって、まず細胞表面のコレステロール含量を正確に定量する新規の方法を開発した(Biochim.Biophys.Acta.,1997)。すなわちコレステロールに結合する性質をもったθ毒素をビオチン化して細胞障害性を無くしたBCθ蛍光標識したものを用いて、培養中の細胞の形質膜表面のコレステロール量の定量化に成功した。コレステロール低下剤として開発されたHMGCoA還元酵素阻害剤(シンバスタチン)で前処理した血管内皮細胞では、細胞膜コレステロール含量の有意な低下が見られた。ついでこの細胞の細胞膜流動性の変化について検討したところ、シンバスタチン前処理細胞では、膜のmobolityが約2倍、また膜のrecoveryが約1.5倍に上昇していることが判明した(Endothelium,1997)。すなわち、人為的に細胞膜のコレステロール含量を減少させると、細胞膜が柔らかくなることが実測された。細胞膜流動性の上昇は細胞膜内の蛋白成分の減少を意味する。コレステロール含量の低下した細胞においては、その増殖性は、正常細胞の半分以下に低下していた。この現象は血管内皮細胞に限らず、血管中膜平滑筋細胞においても同様に増殖能の低下が見られた。しかし逆にその遊走能は有意に増加していた(J.Atheroscr.Thromb.,1998)。さらに、小脳顆粒神経細胞においては、シンバスタチン処理によって神経突起の伸長ならびに、NO産生の増強が観察され、細胞膜コレステロール含量の変化が、細胞の機能に大きな影響を与えることが判明した(Neurosci.Letters,1996,1998)。同様に細胞膜流動性に影響を与えると考えられているEPAについても検討したところ、EPA前処理血管内皮細胞は、VEGFの受容体、すなわちKDR/FLK-1のダウンレギュレーションが起こり、血管新生能が極端に低下することが判明した(J.Cell.Physiol.,1998)。
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