研究概要 |
マトリックスメタロプロテアーゼ(Matrix metalloproteinase=MMP)遺伝子ファミリーは、一次構造が明らかにされた15種類の酵素から構成されており、共通のインヒビターであるtissue inhibitors of metalloproteinases (TIMP)にも4種類(TIMP-1, -2, -3, -4)が区別されている。本研究では、膜型MMP (MT1-MMP)が変形性関節症の関節軟骨に強く発現し、潜在型MMP-2活性化に関与することを示した。また、これまで潜在型MMP-2活性化酵素としての側面しか知られていなかったMT1-MMPが、細胞外マトリックス分解酵素活性を有することを初めて実証した。さらに、MMP-7とMMP-8に対するサンドイッチイムノアッセイ系を新たに開発した。一方、病的関節軟骨においてはcartilage matrix proteinやSPARCなどの新規細胞外マトリックスの過剰発現が生じることを実証し、MMPによるマトリックス分解に続発した生体反応の一部と理解される。実際、軟骨プロテオグリカンの一種であるデコリンのMMPによる分解の結果、細胞外マトリックス産生促進因子であるTGF-βの遊離が生じることを示した。現在、MT1-MMP活性のTIMP-2による阻害機構について検討するとともに、関節軟骨におけるTIMP-1, 2, 3, 4の発現のパターンと軟骨破壊との関連について解析している。
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