研究概要 |
線虫Nippostrongylus brasiliensis(Nb)感染ラットの肺に生じるレフラ-症候群類似病変の発現におけるIgE-マスト細胞系(I型過敏症)の関与を明らかにするため,c-kit遺伝子に変異を有し先天的にマスト細胞を欠損するWs/Wsラットと,正常にマスト細胞を有する+/+ラットにおける反応を比較検討した. 結果1.Nb感染後の肺門リンパ節におけるsurface IgE positive(sIgE^+)細胞ならびに血中IgE抗体レベルは,Ws/Wsラットと+/+ラットの間に差を見なかった.2.Nb感染後の肺肉芽腫の形成及び肺胞洗浄液中の好酸球数ならびにマスト細胞特異的プロテアーゼRMCPIIレベルは,Ws/Wsラットにおいて,+/+ラットよりも有意に低値を示した.3.感染ラット肺を摘出し,in vitroで線虫抗原によって刺激した場合,感作肺組織からのヒスタミン及びロイコトリエン(LT)C4の遊離は,Ws/Wsラットにおいて,+/+ラットよりも有意に低値を示した.4.抗原+エバンスブルー静注による気管血管透過性は,Nb感染後,+/+ラットで有意に亢進を示したが,Ws/Wsラットでは,亢進を示さなかった.5.感染ラット肺におけるサイトカインのmRNA発現をRT-PCR法でみた場合,Th2サイトカインのIL-4,IL-5及びIL-3は,Ws/Ws及び+/+ラット共に感染後発現の増強を認めた.Th1系サイトカインのIL-2,IFN-γも増強を示したが,Ws/Wsラットでは+/+ラットに比べて,発現の立ち上がりは遅延する傾向にあった.その他,TNF-α及びIL-6も共に増強を示した. 以上の結果から,Nb感染によるレフラ-症候群類似肺病変の発現にはマスト細胞を介するI型過敏症が関与することが強く示唆されたが,サイトカインによる調節機序については,さらに詳細な検討を必要とする.
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