研究概要 |
本研究は,主として老化促進マウス(モデル動物)のうち行動生理学的障害を特徴とする学習記憶障害型SAM-P8,脳萎縮型SAM-P10および対照群であるSAM-R1を対象として,その行動学的,形態学的変化の特徴,最新の超高速神経画像解析法や微量元素測定を適用して老化過程における脳内神経伝達機構の動態を具体的に明らかにすることをめざした.研究成果は,以下のごとく4点に要約される. 1)外観上の変化(神山,高倉) 生後1,5,9,14,19〜22カ月齢の外観上の比較を行い,SAM-R1に比しSAM-P10は9カ月齢より,SAM-P8は14カ月齢より顕著な脱毛,皮膚の萎縮が観察された. 2)体重,行動量および摂職量の変動(神山,斉藤健) SAM-P8はSAMR-1に比し,9カ月齢,13カ月齢では昼夜ともに行動は有意に減少,13カ月齢で食物摂取量は有意な増加,体重は6カ月齢,9カ月齢,13カ月齢で有意な減少が認められた.SNA-P10はSAMR-1に比し,4カ月齢より体重,食物摂取量ともに差異が拡大する傾向が認められた.それらの時系列解析では安定した指数スペクトルが共通して認められ,オカス特性の存在が示唆された. 3)神経画像解析(斉藤健,高倉) 脳電位光量差分三次元画像解析法は,実験過程では高い組織活性を維持したサンプルを確保し,短時間で種々の処理を行わねばならない難点があるが,マウス海馬の脳スライスの興奮過程を時間経過に合わせ三次元画像として可視化し,従来に比し画像情報を豊富に提供することが明らかとなった.なお,ストレス負荷影響は画像解析上は明確ではなく,今後さらに検討が必要と考えられた. 4)脳内微量元素濃度(斉藤健,斉藤和雄) SAMP-10はSAMR-1に比し,9カ月齢,12カ月齢で大脳皮質における亜鉛濃度は有意な低下,6カ月齢,9カ月齢,12カ月齢で銅濃度は有意な低下,モリブデン濃度は有意な増加をそれぞれ示した.
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