研究概要 |
1.o-ジクロロベンゼン(o-DCB)の尿中代謝物の同定 o-DCBを溶媒として使用している化学合成工場の労働者の勤務終了時の尿を収集し、加水分解後のエーテル抽出物をガスクロマトグラフ質量分析計を用いて同定した。その結果、o-DCBの代謝物として、2,3-および3,4-ジクロロフェノール、3,4-および4,5-ジクロロカテコールが同定された。 2.o-DCBの尿中代謝物の高速液体クロマトグラフによる定量法の開発 次に、これらの代謝物の高速液体クロマトグラフによる定量法の検討を行なった。まず、尿を塩酸で加水分解した後、エーテル2mlで代謝物を抽出した。次いで、エーテル層0.5mlを採取し、メタノール2mlを加えて検液とした。高速液クロの分析条件としては、カラムはLiChrospher 100RP-18、移動層はジクロロカテコールの測定にはアセトニトリル/酢酸/水(1:12:87)を、ジクロロフェノールの測定にはメタノール/酢酸/水(33:5:62)を用い、検出波長は285nmとした。検量線は10〜100mg/lの範囲で直線性が確認された。また、ブランク尿に標準試料を添加して回収率を検討したがいずれの代謝物も90%以上と良好な結果が得られた。 3.o-DCB曝露濃度と尿中代謝物量の関係の検討 o-DCB曝露濃度と尿中代謝物量の関係を検討するため、化学合成労働者のべ28人のo-DCBの平均曝露濃度(8時間平均値)を測定し、同時に尿中代謝物量を測定した。その結果、終業時の尿中3,4-および4,5-ジクロロカテコール量、2,3-および3,4-ジクロロフェノール量はいずれもo-DCBの8時間平均曝露濃度に対して直線回帰できることが示された。これにより、o-DCB曝露労働者の生物学的モニタリングが可能であることがわかった。 4.o-DCBの尿中代謝物のガスクロマトグラフによる定量法の開発 尿中ジクロロフェノールのガスクロマトグラフによる検討を行なった。尿の前処理は高速液クロ法と同様である。カラムは島津製キャピラリーカラムCBP-20(0.33mm×25m)、キャリアガスはヘリウム、カラム温度は50℃から220℃まで3℃/minで昇温、注入部および検出部温度は250℃とした。検量線は10〜100mg/lの範囲で直線性が確認された。また、ブランク尿に標準試料を添加して回収率を検討したが、いずれの代謝物も90%以上と良好な結果が得られた。
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