研究概要 |
米国Genetic Therapy Inc.より供与されたヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を発現するレトロウイルスベクターを用いて、ヒト肝癌細胞株(HuH-7, SK-Hep-1, HepG2, Hep3B, HLF)に遺伝子導入を行い、ネオマイシン選択でウイルス感染細胞クローンを選択し、以下の実験を行った。In vitroの系において、ガンシクロビルに対する感受性をMTS assayで検討した。In vivoの系として薬剤感受性遺伝子を導入したHuH-7細胞をヌードマウスに接種し、ガンシクロビル投与による腫瘍縮小効果を検討した。【結果】In vitro :レトロウイルスベクターによる遺伝子導入効率はコントロールとしたNIH3T3細胞に比し20〜100倍低いことが明らかとなった。しかし、すべての細胞株への遺伝子導入が可能であり、50のウイルス感染クローンで検討したガンシクロビルに対する感受性は、薬剤量依存性で、Hep3Bの1クローンを除く全てのクローンで薬剤感受性が認められた。なお、ガンシクロビル100μg/ml以下の濃度ではレトロウイルスの感染していない肝癌細胞に殆ど影響を及ぼさなかった。さらに,HuH-7の1クローンと薬剤感受性遺伝子の導入されていないHuH-7細胞との混合培養で,薬剤感受性を検討した結果,遺伝子が導入されていない癌細胞も死滅することが明らかとなった(Bystander effect)。同様の効果はHepG2のクローンでも認められた。In vivo :薬剤感受性遺伝子を導入したHuh-7細胞(10^7)をヌードマウスに接種し,4日後よりガンシクロビルを投与した結果,TK遺伝子の導入された腫瘍でのみ有意な腫瘍増殖抑制が認められ,マウスモデルにおいてもBystander effectが認められた。【結語】肝癌に対するレトロウイルスベクターおよびHSV-TK遺伝子を用いた遺伝子治療の有用性が示唆された。
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