研究概要 |
アルコール性肝炎(ALD)ではリンパ球と共に好中球が・ウイルス性肝炎や自己免疫性肝炎ではリンパ球が肝実質に浸潤し、これが肝炎の発症・進展に大きな役割を果たしている。今回、in vitro flow systemを用いて類洞に比較的類似した条件のshear stress存在下での好中球やリンパ球の類洞内皮へのadhesion,migrationの機序を細胞接着分子(ICAM-1,CD-18,LFA-1)との関係で明らかにした。これら接着分子の抗体を用いてのブロック試験も行った。そして、これらの疾患の治療にしばしば使用される副腎皮質ステロイド剤の抗炎症作用のメカニズムも明らかにした。これらの様子は装置に接続したvideo cameraで経時的に観察した。なお、類洞内皮とクッパー細胞はelutriation rotarを用いて単離し、類洞内皮をconfluentの状態に培養し、実験に供した。また、LPSでクッパー細胞を刺激しTNFの産生を高めたのちその上清を用いた。TNFは濃度依存性にICAM-1の表出を増加させた。adhesionやmigrationには類洞内皮の細胞接着分子であるICAM-1の表出が重要で、それに好中球のリガンドであるCD-18やリンパ球のリガンドであるLFA-1の表出があって初めてadhesion,migration、すなわち、炎症性細胞浸潤が成立することが判明した。クッパー細胞の出すTNFalphaはICAM-1の表出に大きな役割を果しており、副腎皮質ステロイド剤はこれを抑制することにより抗炎症作用を発揮することが明らかとなった。
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