研究概要 |
リノール酸のエポキシドであるLeukotoxin(Lx)による肺レドックスstateの変化とO_2^-産生機序および種々の酸素分圧(O_2^-生成)と外因性NOとの組み合わせによって実験的に急性肺傷害を生じるか否かを検討した。Lx30μmol投与はラットかん流肺のミトコンドリア酸素消費量とチトクロームCオキシダーゼ活性を有意に抑制した。そして、肺組織ATP量、NADH量、GSH量は有意に減少した。LNMMAやSODはこの減少を抑制したが、DNMMAは無効であった。NAD,NADP,GSSG量に変化を認めなかった。すなわち、Lxは肺組織のエネルギー代謝とレドックスstateに影響を与えるが、この機序にNOあるいはNO関連ラジカルが関係している事を示唆する。ラットかん流肺で吸入気酸素濃度21%,40%,もしくは95%で換気しNOドナー(NOC7)を0μM,10μM,50μM,もしくは100μMをそれぞれかん流液リザ-バに投与した。60分後、40%O_2+NOC7100μM群でもっとも乾湿重量比が増加し、かん流液LDH活性も高値を示した。肺かん流圧は増加しないので透過正亢進型肺傷害をNOとO_2^-が最適比になって生じると考えられた。 培養ヒト肺動脈血管内皮細胞をLxとインキュベートするとLxの濃度依存性に即時的にO_2^-を生成した。これはアロプリノール前投与によって抑制された。インドメタシン、アポシニン、SOD、LNMMA前投与は無効であったのでLxは血管内皮のキサンチンオキシダーゼを刺激するものと思われた。LxはARDS惹起物質の一つと目されているが、ARDSに代表される急性肺傷害の機序としてNO関連ラジカルの重要性を示唆する成績を得た。
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