研究課題/領域番号 |
07457205
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
放射線科学
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研究機関 | 放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
辻井 博彦 放射線医学総合研究所, 重粒子治療センター治療・診断部, 研究員 (50088853)
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研究分担者 |
加藤 博敏 放射線医学総合研究所, 重粒子治療センター治療・診断部, 研究員 (80250116)
遠藤 真広 放射線医学総合研究所, 重粒子治療センター治療システム開発室, 研究員 (40160402)
溝江 純悦 放射線医学総合研究所, 重粒子治療センター治療・診断部, 研究員 (80091510)
安藤 興一 放射線医学総合研究所, 第3研究グループ, 研究員 (00159526)
向井 稔 放射線医学総合研究所, 重粒子治療センター・治療・診断部, 医長 (10174236)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1997
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研究課題ステータス |
完了 (1997年度)
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配分額 *注記 |
7,100千円 (直接経費: 7,100千円)
1997年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1996年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1995年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
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キーワード | 荷電粒子線 / 重イオン / 肝癌 / 重粒子線 / 線量分割法 |
研究概要 |
(目的)肝癌の放射線療法は、X線や陽子線を用いた報告がなされているが、重イオンに関する報告はない。本研究の目的は、放医研で炭素イオンで治療された肝細胞癌を対象に、肝腫瘍および肝組織に与える照射効果について検討し、適正な線量分割法を決定することで、同時に肝癌に対する重イオン治療法を確立するために不可欠と思われる治療効果判定基準の作製と、高度照射技術の開発を目指す。(方法)炭素イオン治療を行なった24例(25病巣)について、治療後の肝障害および治療効果を検討した。早期肝障害は、GOT≧300 IU/l,ALB≦2.8g/dl,T.BIL≧3.0mg/ml,PT≦55.0%のうち2項目以上を満たす場合とした。晩期肝障害は、従来から用いられているChild分類の他に、経時的な変化を表現できる方法としてPughのスコアを採用し、スコア10以上となったものを晩期高度肝障害とした。重粒子線の治療効果の評価を行うため、既存の評価法に沿った方法とともに様々な検査の組み合わせについて検討した。(結果)早期肝障害はPughのスコアの方がChild分類よりも相関が強かった。晩期高度肝障害の発生と治療前の肝外門脈側副血行路の存在との間には有意の相関があった。早期肝障害例5例のうち2例に晩期高度肝障害がみられたが、いずれも治療前すでに肝外門脈側副血行路を有していた。早期肝障害と晩期高度肝障害との間に相関はなかった。局所制御不成功例は3例であったが、そのうちの2例は呼吸同期照射法採用前の患者であり、かつ安全域の設定が不十分だった。他の1例は門脈腫瘍塞栓を有しており、やはり安全域の設定が不十分と考えられた。死因についてみると、癌死例の生存期間は肝不全死例に比べて有意に短かった(P=0.03)。癌死4例のうち3例は治療後6ヵ月までにの間に他部位再発が診断された高度進行例であった。肝不全死例は5例とも治療前から肝外門脈側副血行路を有しており、これが重要な余後因子であることが分かった。肝癌に対する放射線治療効果の判定法として、照射野内病巣についての局所効果と、全身性の病巣についてみた全身効果とを区別して評価する方法の作成を試みた。(まとめ)早期肝障害と晩期高度肝障害との間に関係がなかったこと、および晩期高度肝障害の発生と治療前における肝外門脈側副血行路の間に強い関係があったことから、門脈血流障害の憎悪が炭素イオン治療に伴う晩期肝障害の本体である可能性が示唆された。また、肝外門脈側副血行路を有するほどの高度門脈血流障害が無ければ、高度の肝障害は、早期、晩期とも生じないことが明らかとなった。今後、この事実に基づき、重イオンの特徴をより生かせると思われる短期少分割法による臨床研究を進めることにした。なお、癌死例はそのほとんどが肝不全死というよりは治療開始時に既に他部位病巣を有していたもので、これからも局所制御の重要性が裏付けられた。
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