研究概要 |
骨は成長、成熟し、老化する。加齢に伴うこれらの変化の中で閉経後数年間の女性に認められる骨密度の減少は最も大きなものである。閉経後女性における骨密度の減少は個体間で一様ではなくこの個人差は閉経に伴う女性ホルモン、特にエストロゲンの欠落という体内環境の大きな変化に対する反応性の多様性にもとづくものと捉えることができる。この多様性はエストロゲンの標的分子、すなわちエストロゲンレセプター(ER)の量的あるいは質的な多様性、さらにはそれらを規定するER遺伝子の多様性を反映している可能性がある。我々はこの可能性を探るためにエストロゲン受容体(ER)遺伝子の多型性と骨密度ならびに骨代謝マーカーとの関連を検討し、特定のER遺伝子genotypeのなかに低骨密度を示すものが存在することを示した(J. Bone Miner. Metab. vol. 11, pp306-311, 1996、Biochem. Biophys. Res. Commun. vol. 217, pp378-383, 1995)。さらにER遺伝子genotypeと骨代謝との関連を追及するために、ER遺伝子多型性と骨量の経年変化ならびにホルモン補充療法(HRT)に対する反応性との関連を検討した。その結果、ER遺伝子の多型性によって、閉経後の骨量減少速度やHRTに対する反応性の多様性を予測することが可能であることが示唆された。
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