研究概要 |
発達期の脳において、低酸素負荷が局所での一酸化窒素(NO)の産出と微小血流にもたらす作用を明らかにし、さらに局所血流とNOとの相互の関与について検討した。ラット線条体にNO選択的微小電極とレーザードップラー血流計のmicrotipを埋め込み、NOの産生を電気化学的に測定すると共に局所微小血流もモニターした。8%酸素吸入による低酸素負荷と21%酸素による回復期それぞれ1時間これらの動態を追跡した。幼若ラット,成体共に,低酸素負荷時にはNOの産生増加に相応する一過性の電流の増加が認められ、また再酸素化時にも再度NOの増加がみられた.それぞれの増加はNO合成阻害剤であるL-NAMEを投与することによって著しく抑制されたことより,これらのピークは実際のNO産生量を反映するものと考えられた.日齢7では低酸素負荷で平均116pA,再酸素化時には平均191pAの増加,日齢14では,それぞれ平均849pA,847pAに相当する増加がみられ,日齢と共にNO産生量が増加することがわかった.局所微小血流は、低酸素負荷に続く再酸素化に伴って一過性に増加し、その増加率は日齢7と14では負荷前値のそれぞれ124±3%と168±6%であった。これら血流の増加もL-NAMEの前投与により抑制された。幼若なラットほどNOの産生が少ないことは,未熟な脳ほどNO産生が活性化されにくいことを示すものと考えられた。また、局所微小血流の増加も幼若な脳ほど少なく、NO合成阻害剤の投与によって抑制されたことにより、微小脳血流の増加にはNOが関与していることが示唆された。
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