配分額 *注記 |
7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
1997年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
1996年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1995年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
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研究概要 |
我々は近赤外分光法をラット肝に用い,肝組織内nitric oxide(NO)産生や酸素代謝を測定し,肝移植の拒絶反応や肝阻血障害のモニタリングとしての有用性を検討した。1.近赤外分光測定を移植肝に行い,nitrosyl-Hb,oxy-Hb,oxidised-Cyt.aa_3の相対的変化量を算出した。無治療同種移植群では急性拒絶反応早期にnitrosyl-Hbが上昇したが,デオキシスパーガリン治療群ではその上昇は抑制された。NO産生は長時間冷保存後の同系移植でも術後3日まで上昇した。また近赤外分光法によるnitrosyl-Hb測定感度が10^<-4>M以上であることを,spontaneous NO releaser (FK409)を用いたin vitro実験により確認した。無治療同種移植群では、組織学的肝実質組織傷害が著明となる頃よりoxy-Hb,oxidised-Cyt.aa_3値が有意な底値を示した。以上、我々の近赤外分光法は肝組織内NO産生や酸素代謝を経時的に測定できるため,肝移植後の拒絶反応,それに伴う移植肝組織傷害や肝阻血障害も同時に評価できる。2.阻血再灌流障害に対する肝保護の新しい展開として,肝実質細胞と類洞系細胞とでは阻血再灌流障害に対する抵抗性が異なり,各々の障害特異性に応じた保護法を確立した。我々はプロテアーゼインヒビターを加えたnafamostat mesilate(NM)リンス液を開発し,これにKupffer細胞阻害剤を併用することで肝阻血再灌流障害を軽減できた。また絶食ラット肝グラフトは阻血障害抵抗性を獲得しており,肝移植後の生存率が改善することを報告した。絶食ラット肝内に発現したHeat shock protein(GRP78,HSP70)とTNFαを解析したところ,絶食ラット肝臓内GRP78 mRNAの発現強度と移植後の生存率は正の相関を示し,腹水内TNFα分泌も有意に抑制された。ある種のストレス条件下ではストレス蛋白などの細胞保護物質が誘導され,その細胞保護効果により阻血障害に対する抵抗性を導入しうることを明確にした。
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