研究概要 |
研究1.雑種成犬を用い矢状静脈洞及び上大静脈送血による逆行性脳灌流実験を行った。大脳表面の微小循環観察では完全な逆行性循環が確認され、脳組織PCO2上昇も抑制された。逆行性循環時の大脳血管抵抗は順行性の1.2-1.5倍であった。レーザー組織血流量計による大脳皮質血流量は15mmHg,25mmHg,35mmHgの各灌流圧で、5.5,9.0,10.1ml/100g/minで90分間安定した血流の得られた。大脳組織pHiは各6.38-6.8,6.73-7.08,6.79-7.16で60分循環停止群6.24-6.43に対し有意に高かった。マイクロソフェア法による大脳前頭葉/皮質血流は、同じ各灌流圧において2.2/4.0,7.0/12.1,8.1/13.6ml/100g/minが得られた。25mmHgまたはそれ以上で十分な脳灌流が得られ、脳組織アシドーシスから保護可能である。本研究では実効脳組織血流は証明されたが、今後の課題としてHyperfrontalityのない均一な灌流モデルが逆行性脳灌流後の脳浮腫の実験的研究のため必要である。 研究2.超低体温における必要脳組織血流量、安全限界を決定する目的で、雑種成犬43頭を用い20°C,120分超低流量灌流を行った。(2.5,5,10,20,40ml/kg/min)2.5,5,10ml/kg/minでは脳組織酸素飽和度低下が見られたが、10ml/kg/min以上で脳局所pHは保たれた。灌流圧10mmHg以上では、大脳皮質組織血流量が10.2±1.9ml/100g/min以上を保ち、かつ大脳皮質組織血流量9ml/100g/min以上では大脳皮質pHが7.1以上となり、必要脳組織血流量は大脳皮質で9.0全脳で6.7(ml/100g/min)以上となった。従って、一昨年度求めた脳動静脈血管抵抗比より計算して逆行性脳灌流の必要灌流圧は15mmHgと考えられた。大脳皮質組織血流量9ml/100g/min以下の不完全脳灌流の効果については更なる研究が必要である。
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