研究概要 |
補助循環の駆動源としての骨格筋の可能性とその問題点を検討した.先ず,兎を用い左広背筋に電気的トレーニングを施行した後,骨格筋ポンプを作製した.模擬回路に接続し仕事量を測定し,力学的特性及び耐疲労性について,トレーニング施行左広背筋(+)及び未施行右広背筋(-)を比較検討した.初期拍出仕事量(ESW)を左心及び右心条件下で比較し,次いで右心条件下に毎分50回で連続駆動させ拍出仕事量(SW)を1時間まで測定し,耐疲労性を比較した.左心条件下では,SWは(+)側で低い傾向があった.また(+)側の最大ESWは前負荷20mmHgで正常兎左心一回SWの67%であった.右心条件下でも(+)側のESWは(-)側に比し小さかった.前負荷10mmHgでは正常兎右心一回SWの184%であった.また,(-)側は約3分で急速に減少したが,(+)側の初期SWは(-)側に比して有意に小さいものの1時間駆動可能で,耐疲労性が獲得されていた.安定維持された仕事量は初期SWの約1/3,拍動数毎分50回として計算した正常兎右心一回SWの66%であった.また,組織学的にtransformationが確認され,電気的トレーニングされた骨格筋を動力源とすることの妥当性が示された. 次に,成山羊を用い,左側広背筋に電気的トレーニングを施行後,停止側を変位計測器および張力計に接続し,耐疲労試験を行った.さらに,収縮期と弛緩期の張力-長さ関係から最大外的仕事量(maxP)を算出した.その結果,刺激120分後のmaxPは最大3.16Watts/筋肉kgで,耐疲労性も良好であった.また,発生張力は12.14kgf/筋肉kg,stroke lengthは32mmであった.ヒト両側広背筋(重量0.5kgと仮定)を駆動源とし,ケーブルとベローズを介して拍動型ポンプを駆動し左心補助を行うとすると,計算上204mmHgの圧を発生し得,駆動源として期待し得る.しかし,ポンプ後負荷を100mmHgとすると,発生エネルギー損失を50%以下に抑える必要がある.
|