研究概要 |
低酸素状態で飼育した砂ネズミに前脳虚血を作製し、慢性低酸素状態の脳虚血に対する影響を免疫組織化学的に観察した。また、正常酸素濃度状態で飼育した砂ネズミに、一過性の脳虚血負荷を与えて発現に変化をきたす遺伝子の検索、同定を試みた。1.(1)10%の低酸素濃度で3週間飼育した低酸素群砂ネズミは発育遅延、ヘマトクリットの上昇と右心肥大が観察された。(2)両側総頸動脈を5分間閉塞した前脳虚血を作製した海馬CAIの錐体細胞障害は低酸素群がより著しかった。(3)低酸素群では脳虚血前にもVEGF抗原の発現が見られたが、正常酸素群では見られなかった。(4)再潅流後2日,4日では両群ともにbFGF,VEGF陽性となったのが、7日では両者は陰性となった。2.正常酸素濃度状態で飼育された砂ネズミの両側総頸動脈を5分間遮断して前納虚血を作製した。虚血前、虚血6時間後、虚血2日後の海馬組織から抽出したRNA中のmRNA分子種の変動をDifferential display法により検出した実験では、(1)虚血によって減少し消失するもの、虚血によって減少しその後回復するもの、虚血によって新たに発現するものの3群に分けられた。(2)虚血によって減少し消失するバンドからcDNAを回収し、サブクローニング後neuronal pentraxinを同定した。(3)in situhybridizationで海馬錘体細胞にneuronal pentraxinのmRNAを確認し、一過性脳虚血でそのメッセージは減少消失した。(4)Western blotとimmunohistochemistryでneuronal pentraxin蛋白は3群間では差は無かった。3.一過性の脳虚血で海馬錘体細胞のneuronal pentraxinのメッセージは早期から消失し、遅発生神経細胞死への関与が推定された。
|