研究概要 |
鼻粘膜局所免疫応答機構の解析のため下記の実験を行い成果を得た。(1)ヒト扁桃リンパ球の上気道粘膜防御機構における役割を検討する目的で、ヒト口蓋扁桃リンパ球のNOD-scidマウスへの移入実験系を確立した。ヒト口蓋扁桃由来のT細胞やB細胞が移入後長期に亘ってNOD-scidマウスの体内で生存すること、さらには鼻粘膜より抗原刺激を加えることにより、これらのヒトT細胞やB細胞が上気道粘膜局所へ動員されることが示された。これらの結果は、ヒト口蓋扁桃リンパ球が上気道の抗原特異的な免疫応答において、粘膜局所に動員され分化増殖することにより免疫防御機構に関わっていることを示唆するものである。(2)C57BL/6マウスおよびOVAトランスジェニックマウスを用いて、点鼻による鼻局所粘膜免疫応答の賦活を行い、鼻粘膜に動員されたリンパ球とNALTリンパ球を個別に採取し、そのリンパ球分画のFACS解析とRT-PCR法によるmRNAレベルでのサイトカイン産生パターンを検討した。その結果、コレラトキシンと蛋白抗原(HRP,OVAなど)の点鼻により、鼻粘膜での抗原特異的IgA抗体産生が認められ、鼻粘膜に動員されたリンパ球分画でαβTCR陽性T細胞の有意の増加を示し、γδTCR陽性細胞も検出された。さらにRT-PCRにてTリンパ球のIL-2,IFN-γ,IL-4,IL-5,IL-6,TGF-βのmRNAの発現を検討したが、IL-2,IFN-γ,IL-6,TGF-βの発現が増強されていた。この結果は、鼻粘膜でのB細胞による抗原特異的IgA抗体産生において、αβTCR陽性T細胞とγδTCR陽性T細胞が重要な役割を果たしていることを示唆するものである。
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