研究概要 |
粗精製BMPを用い,可溶化I型コラーゲンを支持体としたペレットとした。実験動物は4週齢ラットおよびマウスを用い,背部皮下にペレットを埋入し,埋入後1週から3週に亘り観察を行った。観察期間に従って複合体を含む皮下組織を摘出,4%パラホルムアルデヒドで固定,10%EDTAで脱灰,または非脱灰でパラフィン包埋し,厚さ約4μmのパラフィン切片を作製した。m-RNAの検出は,DIG RNA Labeling Kit (Boehringer Mannheim)を用いてステオポンチン(OPN),オステオネクチン(ONC),および骨特異的とされているオステオカルシン(OCN),I,II,X型コラーゲンの各cDNAから合成したsingle strand RNA probeを調製し,in situ hybridizationを行った。 組織学的に異所性硬組織誘導は,急速に形成された軟骨様組織を介した骨様組織誘導過程であり,いわゆる内軟骨性骨化に類似する過程であった。一方,各コラーゲン遺伝子の発現から観ると,初期に誘導された異所性硬組織形成細胞は,未分化な紡錐形細胞の段階から既に骨芽細胞,軟骨細胞,肥大化軟骨細胞の形質を同時に獲得していることが示唆された。BMP-コラーゲン複合体による異所性硬組織誘導は内軟骨性骨化の各骨基質蛋白(OPN,OCN,ONC)コラーゲン遺伝子の発現様式とは異なる過程であった。本研究では軟骨様・骨様組織移行部の軟骨様基質に封入された肥大化軟骨細胞様細胞と骨髄組織様組織に小腔を開放した一部の肥大化軟骨細胞様細胞がI型,X型コラーゲンの両遺伝子を発現していた。少なくとも骨髄様組織に小腔を開放した一部の肥大化軟骨細胞様細胞は死滅せずに生存していることが示唆された。
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