研究概要 |
ヒト歯髄内のカテコールアミンの量を計測したところ,ドーパが最も多く,次いでノルアドレナリンで,ドーパミンとアドレナリンは少なかった.チロシンからドーパへの生合成酵素であるチロシン水酸化酵素(TH),ドーパからドーパミンへの生合成酵素である芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(AADC),ドーパミンからノルアドレナリンの生合成酵素であるドーパミンベータ-水酸化酵素(DBH),ノルアドレナリンからアドレナリンの生合成酵素であるフェニルエタノールアミンN-メチル基転移酵素(PNMT)の免疫組織化学的局在を明らかにすることによってヒト歯髄内でのカテコールアミンの局所的な生成について調べた.ドーパの免役組織化学的染色では,細動脈の壁に密接して陽性線維が見られたが,その数は極めて少数であった.カテコールアミンの生合成酵素であるTH,AADC,DBHは細動脈の壁に密接して存在する神経細線維や終末と思われる部位に存在した.THが最も多く染まり次いでAADC,DBHの順であった.PNMT陽性神経線維は認められなっかた.このことはヒト歯髄内ではノルアドレナリンまでの生合成が行われていることを示している.AADCは神経のほかに血管壁にも存在した.また,カテコールアミンの分解酵素である,カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)もAADCと同様に血管壁に存在した.ドーパはCOMTの存在下で3-メソキシチロシンに分解される.AADCとCOMTが血管壁に共存することは,両者がドーパの代謝に関与していることを示唆している.
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