研究概要 |
本研究は、甘味抑制ペプチド、グルマリンを用い、甘味レセプターの特性を遺伝学的および神経生理学的に検索し、さらにはグルマリンをプローブに用いて、舌上皮からグルマリンを感受型甘味レセプターの抽出・分離・同定を行う目的で行った。 まず、甘味アミノ酸D-phenylalanineに対する甘味応答を支配するdpa遺伝子をその欠損系BALBマウスをインブリッドパートナーに保有系C57BLマウスのdpa+/dpa+遺伝子を導入してコンジェニックマウスを育成した。このコンジェニックマウスはドナーであるC57BLマウスと同様に行動応答ではD-phenylalanineに対する甘味応答能を発現し、神経応答の解析では、D-phenylalanineを含むすべての甘味物質に対する応答がグルマリンにより抑制された。BALBマウスの甘味応答はグルマリンにより抑制されなかった。鼓索神経単一神経線維応答の解析においても、sucrose-best線維はその甘味応答がグルマリンにより抑制されるものと抑制されないものに分離され、BALBマウスは非感受型線維群のみを、C57BLとコンジェニックマウスは感受型と非感受型の2種の線維群をもつことが分かった。また、D-phenylalanineに対する応答を示す線維はグルマリン感受型の線維群であった。この事実はコンジェニックマウスに導入されたdpa+/dpa+遺伝子はグルマリン感受型の甘味レセプターおよびそれを支配する神経線維群を発現することが示唆された。 次にグルマリンをプローブに用い、結合タンパクの抽出を行った。茸状乳頭から抽出したタンパク質の中には、BALBマウスにはなく、C57BLとコンジェニックマウスに特異的に存在する分子量約78,000と60,000の2種のグルマリン結合性のものが存在することがわかり、以後、そのタンパクの部分構造の解明から遺伝子クローニングへの移行を行う。
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