研究概要 |
歯周炎患者100名(早期発症型歯周炎患者56人,成人性歯周炎患者44名),健常者12人について検討した。成人性歯周炎患者の50.5%,早期発症型歯周炎患者51.2%および健常者の16.7%がヒト歯肉線維芽細胞由来抗原と反応する血清IgG抗体を有していた.ヒト歯肉線維芽細胞に対する自己抗体を有する比率は歯周炎患者のほうが健常者よりも明らかに多かった。歯周病の病型によって抗ヒト歯肉線維芽細胞抗体の存在の有無,抗体の種類に差はなかった。また,患者のHLA classll抗原の遺伝子型と認識抗原との間に関係は見出せなかった。 自己抗体が反応する抗原の数は1個から数個で歯周病患者によって多様であったが,分子量180kDaの抗原に対して強い反応を示す患者が多かった。この抗原の特徴は以下のようであった。(1)非還元下では巨大分子,(2)ヒト歯根膜細胞およびKB細胞にも共通して存在,(3)コラゲナーゼ処理によって110kDaの分子に変化,(4)ヒトType I,Type IIコラーゲン抗体と無反応。歯周病関連細菌とヒト歯肉線維芽細胞の共通抗原性は,17種の歯周病関連細菌を抗原として調製したウサギ抗血清とヒト歯肉線維芽細胞由来抗原との反応によって調べた。約55kDaの抗原に対して多くの抗歯周病関連細菌ウサギ血清が反応した。抗Campylobacter rectus抗体は約35kDaのヒト歯肉線維芽細胞由来抗原と強く反応した。この55kDa,35kDa抗原と歯周病患者が認識する抗原の分子量が一致した。いずれの抗原も,多くの歯周病患者血清によって認識された。歯周病関連細菌抗原とヒト歯肉線維芽細胞由来抗原には,歯周病患者血清によって認識される複数の共通した抗原の存在する可能性がある。 また,歯周病患者の体液性免疫応答の特殊性,局所的な免疫破錠を惹起すると考えられる,歯周病関連細菌の感染態様についても検討した。
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